請願

 

第166回国会 請願の要旨

新件番号 457 件名 タクシー規制緩和の失敗を直視し、新たなルールを確立することに関する請願
要旨  改正道路運送法が施行されて五年が経過したが、ハイヤー・タクシー労働者の賃金・労働条件は年々低下し、生活保護を下回るばかりか、法定最低賃金にも抵触する実態が広がっている。タクシーが原因となった交通事故はこの一〇年間に六割も増加し、輸送の安全は危機にさらされている。タクシー規制緩和は、自らの利益だけを追い求めるタクシー事業者を増車競争と低運賃競争に走らせた。その結果、タクシー事業者のモラルハザードが引き起こされ、道路運送法や労働基準法を守らない企業が増えた。タクシー規制緩和がつくり出したものは、そこで働く労働者の生存権の剥奪(はくだつ)であり、利用者が安心して利用できる移動の権利の侵害である。この現実に対して、国土交通省は有効な対策を講じないばかりか、著しい供給過剰を是正することなく、コンプライアンスを無視する悪質事業者を放置し、値下げ・低運賃への誘導政策を続けている。また、自らが主宰した「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」報告が提起した運転者登録制を導入するに当たり、全く実効性のない制度を企図して、「タクシー適正化特別措置法」の改正を行おうとしている。運賃改定申請に際しては、極限にまで低下した賃金・労働条件の改善を最優先すべきであるが、国土交通省は事業者への行政指導を放棄している。輸送の安全を確保し、利用者に信頼されるタクシーサービスを維持するためには、規制緩和を見直し、早急に新たなルールを確立することが不可欠である。適切なタクシー規制の再構築を図ることで、利用者には安全と快適を、労働者には安心して暮らせる職場を保障するタクシー産業へと再生させなければならない。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、タクシー運転者の登録制を全国に拡充するための「タクシー適正化特別措置法」の改正に当たっては、国土交通省「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」報告を尊重し、運転者の質の確保・向上が図られ、輸送の安全とサービスの向上に実効ある制度とすること。
二、タクシー運賃改定に当たっては、道路運送法改正の際の国会附帯決議にのっとり、賃金・労働条件の改善が確実に実行されるよう必要な措置を講じること。
三、著しい供給過剰状態の是正とともに、道路運送法に反する不当な低運賃競争を排除するよう、国土交通省のタクシー行政を改めさせること。
四、既に明らかとなっているタクシー規制緩和の失敗を根本的に検証し、その弊害を是正して安全・信頼のタクシーを再生するため、道路運送法の見直しを行い、適正需給・適正運賃を可能とする制度を実現すること。

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