請願

 

第163回国会 請願の要旨

新件番号 7 件名 松江市における交通事故死の疑いのある事案の明確な説明を求めることに関する請願
要旨  実妹である松江市の主婦小西静江(当時六五歳)は、平成五年五月三十日(日)早朝、同市寺町二○五番地の路上で、単車にひき逃げされ、脳死の状態で発見され松江市立病院に移送された。警察は静江の多数の傷痕からひき逃げ事故とし犯人捜査中、同病院医師の「内因性クモ膜下出血」との診断(誤診)によって、警察は多数の外傷を知りながらも、二時間後、緊急配備を解除した。翌三十一日の各新聞には左頭部の打撲、両足の傷痕等、交通事故の疑いが報道されている。
 六月一日、松江市立病院で静江の体中に被っている打撲、擦過傷、表皮剥脱(はくだつ)、特に、両足の傷痕等を見た私は、すぐに単車との接触外傷と断定、弟と二人でその傷痕を実測、図示し、写真に撮って事故現場に急行した。事故現場でも沿石上に真新しいスリップ痕を発見し実測、写真に撮ってすぐ、松江警察に赴き、傷痕図を示しこのとおり、「ひき逃げ」であると強く申し入れた。松江署係官は医師の意見を尊重したと言う。私は病気転倒でこのような打撲、切傷痕、表皮剥脱はできない、正真正銘、単車による交通外傷だと、怪我(けが)の実測図を示し強く抗議すると、係官は、「いやー、まだ正式に決まったわけではありません」と言う。それではよく調べていただきたいと強く要請した。
 翌六月二日早朝、機器の力で動いていた静江の心臓が停止する。検視の後、検視官は、両頭部、身体の前後左右の打撲、擦過傷、表皮剥脱等多数の傷痕があり、交通事故の疑いがあると説明、司法解剖(島根医科大学)に付したのである。その結果、「右頭部打撲による外傷性クモ膜下出血」と判明した(松江市立病院医師の内因性クモ膜下出血は誤診であった)。すなわち、静江は左側面を単車にぶつけられて転倒、路面に右頭部を打ったため、外傷性クモ膜下出血を惹起(じゃっき)したのである。七月一日付けの、鑑定書、特記事項には、単車が接触した方向や傷痕が具体的に記載され一目瞭然(いちもくりょうぜん)、単車との接触外傷と分かるように記されている。また警察作成、六月三日付け実況見分調書には、スカート裏面のファスナーのほつれ、直径十四㎝大の血痕、左靴側面に六㎝にわたり泥付着と記されている。六月二日検視、七月七日付け検視調書には、左右両足に六㎝、四㎝大、一㎝大の擦過傷、長さ四㎝大、九㎝等の皮下出血、膝部背面に皮下出血、左右手背部の甲部に黒い汚れ、及び左頭部に鶏卵大のたんこぶが明記されている(以上の傷痕は病気転倒では不可能である。私の上申書に対し、警察は以上の傷痕を、「全くない(七月六日、九月一日付け返書)」と警察自ら記載の調書と違うことを言う)。
 七月一日付け、島根医科大学作成の「鑑定書十三項、特記事項①~⑪」の各項の全部に、単車が接触した方向や傷痕が具体的に記載されている。にもかかわらず、警察は遺族の要請を無視し、この鑑定書を十二年間も隠蔽(いんぺい)して、路面(鈍体)との接触であると事実と違うことを言っている。この鑑定書は、正しい「十三項、特記事項」と、特記事項に反する「三十七項の説明と、鑑定一、二、三」の、相反する文章である。正しい特記事項には「面積の狭い凹凸のある硬い鈍体が前下から後上方向に作用したことによる打撲傷、擦過傷」等、傷痕の長さ作用した方向まで、また表皮片は上から下方向に反転している等、具体的に詳しく記されている。ところが「三十七項の説明と、鑑定一、二、三」は、本件と関係のない四輪自動車を想定し、記したものである。一例を挙げると、「車体との強い衝突や轢過(れきか)はなかったものと推測される」また、「交通事故に遭遇した可能性等が考えられるが、判断できなかった」と言いながら、その反面、鑑定の二で、「左右上、下肢の外傷については第十三項(特記事項)に可能な限り記載したので参照していただきたい」と記している。以上のごとく全く支離滅裂の文書である。
 怪我を実測(証拠に写真を撮る)して単車による打撲、擦過傷、表皮剥脱を知っている私は、正真正銘ひき逃げであると訴えてきた。平成七年五月、被疑者不詳で告訴したが、半年後の十二月末日、嫌疑不十分として不起訴になった。不起訴に納得できない私は直ちに、検察審査会に申し立てたが、審査会から、私の真実の資料を送り返され、九人の審査員の目に触れないまま、誤診断と判明しているのに「内因性クモ膜下出血」の可能性があるとして、本件を不起訴相当であると、検察審査会は重大な誤りを犯したのである。私はすぐに審査会の大きな間違いと誤りを指摘し、反論文を送付している。この審査会の間違った議決書について、元東京都監察医務院長(検視・解剖二万体の法医学の権威)は、専門的に医学上から「大きな間違いである納得できない。」と指摘をされ「外傷性クモ膜下出血」であると、意見書を書いてくださった。
  平成十四年十二月に開示された実況見分調書、検視調書、鑑定書によって、静江の身体に認められた病気転倒では説明できない傷痕等について、次の事実が明らかになっている。(一)平成五年五月三十一日の業務上過失傷害並びに道路交通法違反被疑事件として、六月三日の実況見分調書では、スカートの背面のほつれや、右大腿部分に直径十四㎝大の血痕の付着、及び左靴、左側端部に六㎝にわたり泥の付着、傘の柄の取っ手の曲がりなどを認め記載している。(二)同年六月二日検視、七月七日の検視調書では、左右下肢部及び仙骨部に擦過傷及び皮下出血を認めているだけでなく、クモ膜下出血の要因となる打撲が生じた右側頭部の反対である左側頭部に、鶏卵大のたんこぶを確認明記している(当初警察は、「たんこぶは全くない」と否定していた)。(三)鑑定書の特記事項には、左下肢前面左外側下部に十三㎝×六㎝大の淡紫色変色部一個、その内部下部に、ほぼ前後に走る一・五㎝長の暗赤色線状表皮剥脱を一個、表皮片は前から後方向に反転する。及び左下肢後面上部に二・三㎝×一・三㎝大の淡赤紫色変色部一個、その内部に多数の表皮剥脱が認められ、表皮片は上から下方向に反転している。また右下肢には、前面中央部に三㎝×二・五㎝大の紫色変色部一個、前面下部に七・五㎝×三㎝の淡紫色変色部一個、その内部に一㎝×○・三㎝及び三㎝×○・五㎝の暗赤褐色表皮剥脱を二個認め表皮片は左方向に反転する旨、記載されている。これらスカートの血痕、左靴への泥の付着、左側頭部の鶏卵大のこぶ、二十八か所に及ぶ擦過傷、打撲傷、皮下出血、表皮剥脱等の事実は、静江の身体の左側面に、スクーター等の単車が接触したことによる交通事故であることを明確に示している。
 私が鑑定書等に対する意見を求めた、元東京都監察医務院長は、意見書の中で、これらの擦過傷等は、内因性発症による路上転倒で生ずるものでないと断定している。そして、鑑定書の判断に見られる疑問点を指摘し、「死体所見から単純な内因性クモ膜下出血(病死)ではなく、歩行中にスクーター等の単車と接触して、路上に転倒した外傷性クモ膜下出血と考えられる。よって精査の必要がある。」との判断を示している。以上のように、本件は、単車との接触による交通事故であるという十分かつ明白な証拠がある。また、鑑定書の特記事項を見れば一目瞭然、単車による交通事故と分かる傷痕が具体的に記載されている。これらの事実を警察当局は事件発生以来、一貫して遺族に知らせず隠蔽して、本件を交通事故であると認定していない。これはすなわち、病気転倒ということで、小西静江の遺族は長期にわたり、不適正な行政により、甚大なる精神的苦痛を受けている。
 ついては、警察当局は、これらの客観的な事実、警察自ら作成した各調書、鑑定書特記事項、元東京都監察医務院長の意見書等を踏まえて、なお交通事故と認定しない理由について、公明正大、具体的かつ明確に説明されたい。(資料添付)

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