請願

 

第161回国会 請願の要旨

新件番号 504 件名 公営住宅に関する請願
要旨  国土交通省の諮問機関である社会資本整備審議会住宅宅地分科会と公営住宅管理に関する研究会は、二〇〇三年九月、「新たな住宅政策のあり方について(建議)」(以下「建議」)、「公営住宅管理に関する研究会報告書」(以下「報告書」)を発表した。この建議と報告書は、住宅政策の公平性と効率性を大義名分に、公的直接供給・フロー重視から市場重視・ストック重視を基本理念として、自助努力・自己責任を強調し、居住の権利を認める方向を否定している。特に報告書は、公営住宅制度の見直しを打ち出している。例えば、(一)入居選考の在り方では、「資産の把握・反映」を加え、事業主体にはその実効性を担保するために「資産調査権」を与えるといった強権的制度を提案している。(二)居住のミスマッチ論では、子供の成長や一方の配偶者の死去等により単身世帯になった者には、コミュニティで培ってきた人間関係を無視して住み替えを強要している。拒否すれば、より「多くの便益を得ているものと評価して、その分家賃を高く」する仕組みで追い出しを合理化している。(三)高額所得者や収入超過世帯に対する明渡し請求も、市場家賃を反映した新たな近傍同種家賃を課すことによって退去のインセンティブを機能させるとともに、明渡しを行政処分と位置付け、その目的を効率的に達成させようと提案している。(四)入居承継、公営住宅への期限付入居制度・定期借家制度の導入等、公営住宅政策全般にわたって、制度見直しを提言している。公営住宅制度は、一九九六年の公営住宅法の全面的・抜本的改定を受け、階層特化が急速に進行し、自治やコミュニティは崩壊し始めている。そのうえ、今回の建議と報告書に基づく公営住宅法を改正すれば、自治とかコミュニティの回復どころか、スラム化を余儀なくされる。スラム化は、地域不安を醸成させ、二一世紀の地域分権時代に逆行する。長期不況等の社会情勢を受け、公営住宅への入居希望者は増え続けている。こうした国民のニーズに建議・報告書はこたえるどころか、市場万能論で公共住宅制度を大きく後退させる内容になっており、特に報告書は、公営住宅に安心して住み続けることができないものになっている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、「建議」「報告書」による公営住宅制度でなく、安心して住み続けられる公営住宅制度にすること。
二、「建議」「報告書」の内容に基づく公営住宅法の改正を行わないこと。

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