請願

 

第159回国会 請願の要旨

新件番号 3049 件名 長良川河口ぜきのゲートの開放等に関する請願
要旨  一九九五年七月、長良川河口ぜきのゲートが閉鎖されたが、利水、治水、環境のあらゆる面で重大で深刻な問題が起きている。そもそも長良川河口ぜき(ダム)の建設目的は、愛知、三重の工業コンビナートへの工業用水を確保することであった。ところが、工業用水(給水計画・毎秒一四・八〇トン)の需要はいまだにゼロであり、将来の需要見通しも立っていない。上水(給水計画・毎秒七・七トン)は、愛知(知多地方)、三重(北勢等)に毎秒約二・五トンを給水しているが、それも当局のアリバイづくりのため、住民の意思を無視して取水口を強引に河口ぜきに切り替えての給水である。これに対して、三重・北勢の十市町は、水余りのため、二○○六年の完全受水開始の先送りを正式に決め、三重県もこれを無視することができず受け入れている。さらに知多地方の半田市は、上水の取水口を元の木曽川に戻すよう愛知県に正式に申し入れている。以上のように利水計画は完全に宙に浮き、独立行政法人である水資源機構は無用で有害な存在に至っている。国当局は途中から建設目的の中心は治水だと強弁してきたが、既に治水上必要な浚渫(しゅんせつ)は終了しており、せきは不用となり、かえって洪水時等には大変危険な障害物となっている。河口ぜきが及ぼす環境の面では、ゲート閉鎖後、せき上流域は湖沼化し、毎年アオコが発生し、せき下流域ではヘドロが堆積(たいせき)し、ヤマトシジミはほぼ絶滅した。さらに長良川のシンボルである天然稚アユの河口ぜき魚道における遡上(そじょう)は激減し、皆無に等しく、サツキマスの漁獲高も衰退の一途をたどっているなど、長良川をめぐる全生態系の破壊が進み環境悪化は深刻である。河口ぜきの関係地域の社会・経済に与えている悪影響も重大である。長良川にはもう天然アユがいないというダメージが全国に広まり、二〇〇一年の岐阜市の長良川鵜飼(うかい)観覧乗船者数は過去最低となり、過去最高(一九七三年)から約三割に減少した。長良川河口ぜきと全く関係のない木曽川の犬山鵜飼では過去最高から約四割への減少と比べると、岐阜市の鵜飼の落ち込みは、一般的な不況の影響だけではなく、河口ぜきによる影響が大であることは明らかである。長良川河口ぜきは、利水に無用、治水に危険、環境に有害であることはもはや論を待たない。長良川沿川の主要な漁協や多くの釣り師は、せめて天然アユの降下・遡上時期にはゲートを上げてほしい、さらには海抜下の三重県長島町の住民は洪水時、地震時に危険となる河口ぜきを取り払ってほしいと、それぞれ切実な声をあげている。
 ついては、河口ぜきの最終的撤去を求めつつ、当面、次の事項について実現を図られたい。

一、河口ぜきのゲートを直ちに開放して、公正、民主、厳密な環境アセスメントを実施すること。
二、水余りの下、ばくだいな税金を投入する無駄な導水事業工事を直ちに中止すること。
三、住民の意思を無視した強引な河口ぜきからの上水の給水を直ちに中止すること。

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