請願

 

第156回国会 請願の要旨

新件番号 2630 件名 公共事業の生活・環境重視への転換等に関する請願
要旨  デフレ経済の下で進められている不良債権の最終処理で、大銀行が公的資金で救済される一方、地域の金融機関の破たん・統廃合が進み、中小企業には貸はがし、貸渋りが横行し、中小零細企業が圧倒的多数の建設産業では、倒産、廃業、失業、夜逃げ、自殺などに追い込まれる深刻な事態となっている。それでなくとも建設産業は、長引く不況の下で、公共事業の縮小のみならず、大手ゼネコンや住宅企業の中小市場への進出によって競争が激化し、中小企業では赤字受注がまかり通っており、大手ゼネコンによる採算無視の指し値発注、下請代金切下げ、不払などが横行している。公共事業の在り方も問われている。大規模プロジェクト中心のこれまでの公共事業が、国・地方の財政を圧迫し、長期債務の合計は六九三兆円という規模にまで膨らんでいる。利便性や採算性が失われ、環境破壊を進める大型公共事業の見直しが、長野県の「脱ダム宣言」などに見られるように始まっている。大型公共事業は大手ゼネコンが受注し、政・官・財(業)の癒着、談合の温床ともなり、政治家の口利き疑惑には枚挙のいとまがない。さらに深刻なことは、現場では機械化や省力化が進み、建設労働者の雇用確保にはつながらず、逆に不況の下で、下請単価や労働者の賃金・労働条件が切り下げられ、大手ゼネコンだけが利益を上げられるようになっていることである。しかし、政府の二〇〇三年度概算要求は、前年度並みの規模で都市再生の名による従来型の大規模公共事業を一層進めようとしている。この中で国土交通省は、コスト削減を労務単価の切下げで行ってきており、これが労働者の賃金・労働条件の切下げに拍車を掛けている。公共事業を実施する側も、天下り・癒着構造を温存するような公務員制度改革、特殊法人改革、職員の大幅削減で、公正な発注や施工管理に関する業務がしわ寄せを受け、道路・河川・港湾・住宅や防災対策など、国民・住民本位の公共事業実施の行政責任やサービスが果たせなくなる。防災や環境保全、住民生活の改善につながる生活密着型の公共事業に切り替え、無駄な公共事業を廃すること、国民の税金で賄われる公共事業を、大手ゼネコンだけが利益を上げるシステムでなく、ILO第九四号条約(公契約における労働条項に関する条約、五九か国で批准)で定めているように現場で働く建設業者・労働者が安心して生活できる単価・賃金を保障する制度の確立を求める。また、公共構造物の品質確保と事業の公正な執行ができるように、国や地方自治体の公共事業執行職場の体制を充実するよう強く求める。
 ついては、次の措置を採られたい。

一、建設労働者と中小企業の仕事と収入を確保し、暮らしの安定を図ること。
 1 公共工事における積算金額が下請・資材業者、建設関連労働者に適正に保障される制度を制定すること。また、不払が発生した場合の救済制度を制定すること。
 2 中小建設業者の経営安定のための受注機会の確保を図る措置を講じること。 
二、公共事業を国民の生活関連と国土・環境保全優先に転換し、国民本位の公共事業執行体制の整備を図ること。
 1 公共事業を抜本的に見直し、大規模プロジェクトに偏重せず、国民の生活関連と国土・環境保全、防災優先に転換させること。
 2 環境・住民合意を優先し、乱開発を規制する法律体系を整備すること。
 3 公共事業の長期計画は議会承認事項とし、事業決定に当たっては、情報の公開及び公正、民主的な住民参加のシステムを確立すること。
 4 良質な社会資本を整備・維持していくために、執行体制・管理は国や地方自治体等が責任を持って行い、安易な民間委託・民営化は行わないこと。
 5 国民本位の公共事業を推進するために、国土交通省の地方整備局、事務所・出張所、筑波機関、独立行政法人などの体制を充実し、必要な職員を確保すること。

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