請願

 

第156回国会 請願の要旨

新件番号 2321 件名 強行採決に強く反対し、心神喪失者等医療観察法案を即時廃案にすることに関する請願
要旨  「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」は、重大な他害行為を行ったとされた場合、精神障害者のみを一般的な司法制度から除外し、強制的に不定期予防拘禁でき、その後も、保護観察所や精神科医療機関を動員して監視体制下に置くものである。この法案に対し、精神神経学会や日弁連を始めとした精神医療関係者、法曹関係者、そして多くの障害者団体から反対の声が続出し、衆議院の審議でも、参考人の多くから法案の根幹にかかわる疑義が述べられた。政府・与党はこれらの意見に明確に答えることすらできず、法案の理論的欠陥を露呈するばかりであったにもかかわらず、名ばかりで実体のない医療や社会復帰を強調するだけで、本質的には何の違いもない修正案をもって、強行採決で打ち切り、昨年一二月に衆議院で可決させた。この法案は、精神障害者を犯罪素因者として危険視した上で社会防衛的につくられた、保安処分立法であり、現在でも差別に苦しむ精神障害者に憲法の人権保障も、刑法の罪刑法定主義も認めない差別立法である。法案は精神医療を治安対策としかとらえていない。諸外国に比べ長い入院期間、七万を超す社会的入院患者、精神科のみ医師・看護師が少なくてよい特例、等の実態は、隔離収容時代の残滓(ざんし)である。日本の精神医療は身体科に比べ、医療水準でも人権保障でも大きく後れている。司法精神医療においても、起訴前の鑑定のずさんさ、矯正施設での医療の乏しさ等の基盤の問題は放置されたままである。法案が成立すれば、精神医療は再び隔離収容と管理統制の流れにゆがみ、更に悪化してしまう。医療近接性が下がれば逆に触法行為の増加を招く悪循環が予想される。修正案は批判を受けて、附則に「精神保健福祉全般の水準の向上」を掲げているが、実効性は全くない。保安処分自体には何の変更もなく、再犯可能性には関係なく対象が拡大された実質的な改悪である。保安処分に伴い精神医療に予算が下りても、精神保健福祉全般の向上には役立たず、逆に悪化を増強するだけである。新法は必要なく、後れている精神保健福祉の現状が直ちに改善されるべきである。
 ついては、参議院でこれらの問題点を検討し、今国会で「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」を廃案にされたい。

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