請願

 

第155回国会 請願の要旨

新件番号 205 件名 道路交通法改正に関する請願
要旨  現在、環境汚染や地球温暖化の原因になる無用なアイドリングを行う運転者がしばしば見受けられる。道路脇(どうろわき)で駐停車中にエンジンを消さないことは日本ではごく当たり前のことになっている。中には、運転席を離れるときさえエンジンを消さない人も少なくない。大都市では車の排気ガスによる環境汚染を憂慮して、車の使用を控える方策が講じられるほどであるのに、日本ではそのような行為を規制する法律がない。停車している車から出る排気ガスは普通の濃度の汚染より五〜六倍強くそばを通る人の健康に害を及ぼす。車の排気ガスは老弱者や子供の呼吸器官に致命的な害を及ぼす。また(ドライバーを含め)だれであれ、それに長時間さらされていては健康を維持することができない。調査によればガソリン車一台が一〇分(エアコンを掛けずに)アイドリングを行った場合、燃料消費は〇・一四リットルに達し、それは一〇〇ワット白熱電球七・四時間分の二酸化炭素排出量に当たる。日本で何の法的規制もなく行われているこのような行為に対しては社会の公器である法律で対処するしか方法がない。ヨーロッパ諸国においてはエンジンの点火は移動のためだけに行うというのが運転者の認識の中で鉄則となっている。一九七二年に制定されたドイツ連邦道路交通法を始め、ヨーロッパ諸国の道路交通法はアイドリング行為を明白に禁止している。スイスでは信号待ちのとき、待機線から四台目以降の車はエンジン停止を義務付けられている。またドイツではごくわずかな例外を除いて一分以上のアイドリングは罰金の対象になる。道路交通によって必然的に生じる弱者に対する保護の精神、つまりドイツ道路交通法の交通における一般原則(第一条二号)及びアイドリングほか一般住民の権利侵害を禁止した第三十条一号こそ民主主義的国家運営のあるべき姿である。現在の日本の道路交通法における車を持たない弱者の権利への沈黙は民主主義の原理違反であり、アイドリング行為は住民に精神的、肉体的被害を及ぼすものである。それを是正することこそ、一般の市民の権利を守ることである。これを行わない国家は憲法第二五条第二項における国の義務の遂行怠慢のおそれがある。現在の道路交通法は道路使用における明示的危険防止を主な目的としており、すべての人間への配慮という一般原則を欠いている。その結果日本ではアイドリング行為が慣習化しており、規制する法的根拠がないのが現状である。このように、日本社会において共に生きるという社会生活の原理が力を失い、自動車の有無による社会における深刻な不平等が生じており、それは道路交通法の不備の是正で解決されるべきである。社会構成員の基本的権利である生存権にかかわるこのような問題は是非国会での論議と法律改正で解決されるべきである。
 ついては、国会での審議の際には、次の事項について実現を図られたい。(資料添付)

一、現行の道路交通法の中では車に対する概念は一般住民(他人)に及ぼす害の主体としては正しく定義されず、単なる物理的移動体としてとらえられている。住民生活の観点から、車の行為が住民環境の中で持つ意味を正しく算定すること。
二、現行の道路交通法においては、交通主体者間の交通の機能中心の考え方から、車が他人(通行人を含め生活者としての住民)に負うべき責任や他人との権利の衝突時の権利優先の問題については明確にされていない。民主主義のルールに従ってこの問題を至急に処理し、他人優先の原理を交通の一般原則として同法に盛り込むこと。
三、車の他人に対する迷惑行為は明示的な条文として禁止すること。取り分け無用な騒音、排気ガスを発するアイドリング行為についてはそれを明確に禁止し、罰金を設けること。

一覧に戻る