請願

 

第155回国会 請願の要旨

新件番号 180 件名 地価低落のため延納相続税の支払に困窮している相続人に対し、延納から物納への切替特例を認める相続税法緊急改正に関する請願
要旨  相続時、税務署の好まない物納を避け、延納を選択したが、土地の価格は、実勢価格では平成三年ごろから、路線価評価額では、平成四年ごろから、連年、下落を続け、相続時の十分の一から十分の二程度に下落するとともに、土地取引も激減して、土地の買手が容易に現れず、延納相続税額の支払に困窮するとともに、市中金利に比べて高い延納利子税額の支払を督促されて、相続税の納税は、塗炭の苦しみに達している。さらに、税務署から、何ら明確な理由も示されず、突如として延納の許可が取り消されるという苛酷(かこく)な処分を受け、納税資金調達の困窮は、最悪の状態となっている。昭和六四年一月一日から平成三年一二月三一日までの相続につき、延納選択していた相続人に対して、平成六年三月三一日公布の租税特別措置法第七十条の十により、延納から物納への切替えを認めた特例を緊急立法したにもかかわらず、租税当局は、平成七年三月の租税特別措置法の改正で削除したが、この規定を復活し、延納を選択している納税者に文書等により、確実に周知徹底させ、不知のゆえに、物納切替権を行使できなかった者が生じないようにするとともに、物納切替選択できる相続を昭和六四年一月一日から平成一二年一二月三一日までの相続と改正することを求める。昭和六四年以降の地価の低落状況と土地取引の減少傾向は平成三年で打ちとどまることなく、平成一二年一二月まで引き続いているが、延納から物納への切替制度を平成三年分の相続税で打ち止めし、平成四年分以降の相続税について認めないことは、全く不公平であり、不合理である。しかも、地価の下落は、政府の政策に原因し、特に相続税評価額の大幅引上げと地価税や特別土地保有税の創設等の政策によって生じたといえる。政府は、民間金融機関の不良債権の処理を最重要点政策としているにもかかわらず、地価の下落によって著しく不良化している延納担保土地にかかわる相続税債権については、平成六年の特例法によって、昭和六四年分から平成四年分までのわずか四年分の延納相続債権で、しかもそのことを知ることができた相続人についてだけ、物納切替えを認めただけであり、平成五年以降分の延納相続債権はもちろん、平成五年以前の延納相続債権も、著しく不良資産化しているのに、物納切替措置による不良資産の処理を進めていないことは、資本を注入してまでも金融機関の不良資産の早期処理の促進を声高に叫んでいる政府の態度とは全く矛盾している。相続税に対して延納から物納への選択権を認めることは、既に納税を完了した者との間に不公平が生ずるという租税当局側の意見があるが、このような差異は、昭和六四年分から平成三年分までの相続に関して延納特例を選択していた者に改めて物納特例を選択させたときにもあった問題であり、また、延納選択者が延納を完了したことは、延納担保土地がうまく売却できて、納税できたものと考えるべきである。延納を選択し、物納しなかったのは、税法上は当初から選択できるのに、税務署の好む延納を選択した納税者が、相続税納税のスタートに戻ったと解すべきであり、不公平の問題は、全く生じない。さらに、租税当局は、延納担保土地の価格が低落していて、国税徴収法による滞納処分を行っても延納税額に足りないときは、延納担保になっていない他の相続財産を差し押さえて公売処分を行うと述べているが、このことは国税徴収法が相続税法に代わって遡及(そきゅう)課税を行う結果を生じ、租税法律主義の内容である租税不遡及原則の違反となる。しかも、延納担保土地の低落の原因は、納税者には全く責任はないので、延納から物納への切替措置を平成三年分の相続税までで打ち切ることは、正当な理由がない。土地デフレ期で、地価の低落ないし土地取引の減退が生じているときの延納相続税を納付させる手段は、平成六年三月三一日公布の租税特別措置法第七十条の十の規定(相続税の延納の許可を受けた個人の延納税額についての物納等の特例)を恒久法として、「相続税法第三十八条第二項の規定による延納の許可を受けた者は、その延納期間中ならば何時でも延納に代えて税務署長に対して、物納の許可を申請することができる。」という規定を設けることしか、憲法上の租税法律主義の一つである租税不遡及原則違反の非難を免れる方法はない。政府が政策の重点を置こうとするデフレ対策の観点からも、相続税の減税を進めるとともに、延納担保土地を物納に切り替えることが最も適切な方法と考える。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、平成六年の「租税特別措置法第七十条の十」の規定による相続税の延納から物納への切替特例を復活すること。
二、租税不遡及課税の租税法律主義の憲法原則に従って解決すること。
三、民間の不良債権の早期償却を急ぐという政府の政策に呼応して 、不良延納相続税債権を物納切替えによって、早期整理の目的を達成すること。
四、会期末に請願の採否を決定する慣行に代えて、会期中にも本請願を委員会の議題として取り上げ、論議を進めるとともに、請願人の参考人招致を行うこと。
五、路線価評価額を公示価格の八○%というような画一的評価方法を改め、デフレ時代にも対応できる弾力的な路線価評価に改め、延納支払の期間を二十年から十年に短縮するとともに、現行の最高税率七○%を諸外国のように五○%以下に引き下げ、また、急激な累進税率を引き下げて十年間の延納期間に短縮しても納税できるように相続税法を根本的に改正すること。

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