請願

 

第155回国会 請願の要旨

新件番号 17 件名 じん肺根絶に関する請願
要旨  世界で古代から現代に至るまで、大量の労働者が、じん肺に罹患(りかん)し苦しんできた。じん肺は、最古にして最大の職業病である。日本では、一九六〇年にじん肺法が制定されてから既に四二年が経過している。それにもかかわらず、いまだに二万人近くの有所見者がおり、毎年一千人以上が新たに療養を要する最重症じん肺患者として認定されている(厚生労働省統計二〇〇〇年度、有所見者数一五、三二一人・新規要療養者数一、一八〇人)。二〇〇一年七月一九日には、筑豊じん肺訴訟について福岡高裁判決が言い渡されているが、裁判所も、国がじん肺防止のために権限を適切に行使しなかったなどとして国の責任を明確に認めている。また、現在最大のじん肺被害者を出し続けているトンネルじん肺については、全国二三か所の裁判所において成立した和解において、工事を発注する国、地方公共団体、公団等に対し、トンネルじん肺を根絶するために、厚生労働省通達である「ずい道建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」を守るために適切な対策を求めている。ILO(世界労働機関)・WHO(世界保健機関)は、じん肺を根絶するために世界計画を提唱し、また二〇一五年には世界中からじん肺をなくすべきであると提唱している。日本政府もこれにこたえて、遅くとも二〇一五年までにはじん肺を根絶させなければならない。既に、二〇都道県議会、一、二七九市町村議会が意見書を決議し、一、〇一四人の地方自治体首長が、じん肺根絶の要求に賛同し総理大臣あての要請書を提出している(二〇〇二年六月末現在)。じん肺根絶は、日本社会が緊急に解決すべき課題である。政府、自治体、企業、労働者など各方面による実践を通じて実現されるものではあるが、取り分け、制度改革を含めて、国の対策が最も強く求められている。
 ついては、二一世紀初頭において、日本でじん肺を根絶させるために、次の事項について実現を図られたい。

一、日本政府は、ILO・WHOの世界計画に呼応し、速やかにじん肺根絶計画を立て実行すること。計画立案に際しては、じん肺罹患者など広く国民の意見を酌むこと。
二、厚生労働省通達「ずい道建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」の完全実施の上に、粉じん測定を義務付けるなどより徹底した粉じん対策を確立すること。また、依然として多くじん肺を発生させている造船や各種製造業、建設業等すべての職場における粉じん対策を徹底すること。
三、すべてのじん肺有所見者と三年以上の粉じん作業経験者に手帳を交付するなど、じん肺の早期発見と十分な健康管理を徹底すること。

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