1. トップ >
  2. 今国会情報 >
  3. 参議院の調査会

今国会情報

参議院の調査会

参議院の調査会トップに戻る

調査会の報告書トップに戻る

国際問題に関する調査会

調査会別一覧に戻る

国際問題に関する調査報告(中間報告)(平成8年6月12日)

 本調査会は、国際問題に関し長期的かつ総合的な調査を行うため、平成7年8月4日に設置され、3年間にわたる調査活動のテーマを「アジア太平洋地域の安定と日本の役割」と決定した。
 第1年目においては、このテーマの下、「アジア太平洋地域における安全保 障の在り方」を中心に調査を行った。去る6月12日、調査報告書(中間報告)を取りまとめ、同日議長にこれを提出した。その主な内容は次のとおりである。

1 アジア太平洋地域の情勢認識

 アジア太平洋地域は、世界の成長センターとなっている一方、朝鮮半島問題 、中台関係などの問題も存在している。
 アジア太平洋地域の情勢認識について、委員から、この地域は経済発展を遂げつつある反面、領土、宗教、民族などに根差す地域紛争の火種が顕在化するなど不透明な状況にあり、中長期的には,経済発展に伴い、人口、食糧、エネルギー、環境問題が深刻化する可能性もあるとの意見が表明された。

2 アジア太平洋地域の平和と安定のための方途

 アジア太平洋地域では、アセアン地域フォーラムなど多国間の安全保障に関する対話の努力が開始されている。また、多国間協力による人口、食糧、環境、エネルギーなどの諸課題解決への取組みが始まっている。
 政治・安全保障分野について、委員から、アジアで集団安全保障が構築されることが理想であるとの意見、当分は日米安保条約など二国間条約を中心にして、多国間の協議システムによって補完していくのがよいとの意見が表明されたほか、日米安保体制に固執することが、真の集団安全保障への接近を妨げることになっているとの意見も述べられた。
 また、経済・社会・人的交流等の分野について、委員から、我が国は開発協力、環境、食糧、人口、人権等の分野における貢献によって総合的安全保障をこの地域に広げていくべきであるとの意見、我が国への留学生や研修生に対する施策を充実させ、人的交流をより一段と拡大する必要があるとの意見が表明された。

3 我が国の安全保障の在り方

 昨年11月の「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」の閣議決定、本年4月の「日米安全保障共同宣言」の発表などの動きを背景として論議がなされた。
 我が国の安全保障について、委員から、世界情勢の中で、日本の国益、すなわち、繁栄を維持し民主主義の体制を守る視点に立ち、いざという場合の対応を現実的に考えていく必要があるとの意見、我が国は自ら力の空白を作り出し、周辺地域における不安定要因とならないとともに、日米安保体制を堅持し、我が国独自の外交、防衛努力により安全を確保する見地に立つべきであるとの意見、また、目に見える軍縮を進め、アジア諸国から見て分かり易い専守防衛の姿を示すことが歴史の清算と信頼醸成に必要であるとの意見が述べられたほか、日本は軍事同盟をなくし、非核非同盟の方向を進むべきであるとの意見が示された。
 また、日米安保体制について、委員から、日本の平和と繁栄が維持できたのは日米安保体制があったからであり、経済摩擦の中でも、日米の友好信頼関係の基盤をなすものであるとの意見、多国間の安全保障協議は二国間同盟に代替することにはなり得ず、日本は国益を踏まえながら安保体制に対処していくべきであるとの意見が表明された。他方、日米安保条約の廃棄、米軍基地の撤去がこの地域における安全保障のために不可欠な課題であるとの意見も述べられた。
 さらに、集団的自衛権をめぐって、委員から、集団的自衛権は自然権であり、国家が当然有するものであるとの認識に立ち、集団的自衛権の行使を認めるべきであるとの意見、現憲法にも集団的自衛権を行使してはならないとは全く書かれておらず、政府解釈を変えることを明確にすればよいのではないかとの意見、集団的自衛権が憲法第九条のために行使できない現実を打破するために、憲法を改正することが我が国の国益にかなうとの意見が表明された。一方、集団的自衛権の行使を認めると、日本は米国の軍事行動に巻き込まれて共同行動を迫られる危険があり、集団的自衛権や憲法改正にはあくまで反対であるとの意見も示された。