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国民生活・経済に関する調査会

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国民生活・経済に関する調査報告(中間報告)(平成8年6月17日)

 本調査会は、平成7年8月に設置されて以来、公正で活力がある経済社会と豊かで安心して暮らせる国民生活の実現を目指して「21世紀の経済社会に対応するための経済運営の在り方」を調査項目として取り上げ、政府及び参考人から説明・意見を聴取し質疑を行うとともに、委員派遣による実情調査を行うなど鋭意調査を進めてきた。
 このたび、中間報告がまとまり、これを議長に提出した。本報告は、調査の初年度であることから、経済運営の現状と課題について、政府からの説明、参考人からの意見を中間的にとりまとめたものである。
 その主な内容は以下のとおりである。

1 我が国経済社会の動向

 戦後、我が国は目覚ましい経済発展を遂げた。しかし、我が国の経済運営が産業優先であったため、内外価格差、生活関連社会資本整備の遅れ、長時間労働等の問題が生じている。こうしたことに加えて、バブル後の景気の長期的停滞や急激な円高が国民の間に先行きに対する不透明感・不安感を生じさせている。また、我が国の経済社会においては、少子・高齢化や経済活動の国際化、情報化の進展等がみられる。これらの変化は21世紀に向けて一層加速することが予想されることから、経済と国民生活に多大な影響を及ぼすものと考えられる。
 こうしたことから従来の経済社会システムを見直し、新たな枠組みを構築していくなかで豊かな国民生活を実現するための適切な経済運営を図っていく必要がある。

2 経済運営の現状と課題

(1) 社会資本整備の現状と課題

  1. 我が国は、戦後目覚ましい経済的発展を遂げたが、国民生活の視点から見ると、経済力に見合った豊かさを実感できないとの不満も多く、その一因として、生活関連の社会資本整備の遅れが指摘されている。本格的な少子・高齢社会を目前に控え、人口構成が若く家計貯蓄率が比較的高い間に、豊かさを実感しうる社会資本の整備を促進する必要がある。
  2. 今後の社会資本整備の在り方としては、まず、生活関連基盤の整備の一層の促進を図ることが大切である。その際には、質の向上にも配慮し、真に国民が豊かさを実感できるような社会資本の整備を進める必要がある。また、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、各種の自然災害に強く安心できるくらしの実現も求められていることから、社会資本の安全性・耐震性の向上も図らねばならない。
     一方、21世紀に向け、我が国の経済活力を維持・向上するには、情報通信基盤や国際空港・国際港湾の整備を進めるとともに、新産業を育成するための研究開発機能の強化が必要である。
  3. 当初予算における公共事業関係費の省庁別・事業別の比率は、毎年ほとんど変化せず、硬直化しているが、時代の状況変化に合わせた公共投資の配分を行う必要がある。そのためには、一律的な概算要求基準(シーリング)の見直しを含め、予算の編成システムの在り方を見直す必要がある。また、公共投資を効率的かつ効果的に進め、国民の多様なニーズにこたえうるものとするためには、各省庁間相互の連携を図りつつ、総合的・横断的に事業を進めることが必要である。

(2) 社会保障の現状と課題

  1. 少子化・高齢化等の経済社会の変化や新たな国民のニーズに的確に対応していくためには従来の社会保障制度の枠組みにとらわれることなく他の施策や制度との整合性を図る中で抜本的な見直しを行う等、新たな制度を構築していくことが必要である。
  2. 増大・多様化していく介護需要に対応するため、在宅ケアを支える体制づくりや施設ケア、更にその基盤となるマンパワーの確保が求められている。公的介護保険制度は、社会保障全体あるいは国民生活に影響を及ぼすものであり、国民に新たな負担を課すものであることからも、措置制度との整合性に十分配慮するとともに、国民の十分な理解と合意が必要である。
  3. 子供は将来を担う存在であることから、社会全体で育てていかなければならない。このため、有子家庭が無子家庭に比べて経済的・社会的に不利になることがないような施策が必要である。
  4. 高齢期の生活の安定に資するため、公的年金制度は、雇用との連携を図るとともに、高齢期の生活を保障する主柱として必要な給付水準を確保することが重要である。また、制度の長期安定と世代間の負担の公平を図ることも重要である。

(3) 産業政策及び科学技術研究開発の現状と課題

  1. 我が国経済は、欧米へのキャッチアップを目指し飛躍的発展を遂げた。しかし、現在は規制等のために、経済社会の閉鎖性や高コスト構造が問題になっている。このため、経済構造を改革し、将来の発展基盤を確立する産業政策が必要である。
  2. 豊かな国民生活の実現について配慮しつつ、非効率的であると指摘されている非製造業等についても、規制の緩和を行い、競争の促進を図ることが必要である。また、民間取引慣行のうち競争制限的なものは、独占禁止法の運用強化等による是正が必要である。
  3. 企業関連制度のなかには、純粋持ち株会社の禁止等、課題となるものがある。また、我が国の法人課税の実効税率は欧米諸国に比較してかなり高く、見直しが必要である。
  4. 新規事業の創出は、21世紀の我が国経済発展基盤形成にとって重要であるため、ベンチャー企業を資金や人材面で支えていく制度や環境整備が必要である。ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業に対して資金供給ばかりでなく、経営ノウハウ等も提供し支援することが必要である。
  5. 我が国の科学技術は、欧米に比較して遅れている分野もあり、一層の研究開発の推進が不可欠である。特に、研究開発費の政府負担割合が低いため、その充実が必要である。また、研究者の研究環境の整備も必要である。

(4) 労働政策及び人材育成の現状と課題

  1. 産業構造の転換、労働力人口の減少など雇用を取り巻く環境が変化し、雇用も流動化するなかで、労働力需給のギャップを調整し、雇用を確保していくことが重要である。
  2. 雇用は定年制が年金支給開始年齢とリンクすることが基本であることから、65歳定年制の実現が課題である。
  3. 障害者が働きやすいよう職場環境の充実を図り、法定雇用率の完全達成が必要である。
  4. 仕事と育児・介護が両立できるようにするため、育児休業を取得しやすい環境整備、また介護休業制度の普及の早期実現が必要である。
  5. 今後の我が国の経済社会の発展基盤となる人材の育成においては、創造的な人材、国際化に対応した人材、情報化に対応した人材の育成が必要である。また、青少年の科学技術離れ対策も重要である。