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参議院のあらまし

小委員長報告(平成17年3月9日)

第162回国会参議院憲法調査会会議録第5号1頁~2頁

 ○舛添要一君 小委員長報告を申し上げます。

 二院制と参議院の在り方に関する小委員会におきましては、一年余にわたる調査を終え、本日、調査報告書提出の議決を行いました。

 小委員会における議論では、各会派おおむね共通の認識が得られたものと、現段階では意見が分かれているため、更に今後検討が必要なものがありました。これらを整理し、小委員会調査報告書として取りまとめた次第であります。

 その議決に当たりまして、日本共産党を代表して、吉川春子小委員より、本報告書の整理は改憲の方向を示すものであり、その提出には反対する旨の意見が述べられ、採決の結果、本報告書は多数をもって提出すべきものと決定したことをまず御報告いたします。

 さて、二院制と参議院の在り方につきましては、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきというのが各会派ともおおむね共通した認識でありました。このテーマに関しては、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第百五十九回国会の平成十六年二月十八日の憲法調査会で「二院制と参議院の在り方に関する小委員会」を設置することが決定され、以後、七回にわたり、参考人質疑、小委員間の意見交換等を重ねてまいりました。途中、第百五十九回国会の五月二十六日には小委員会の経過概要を、第百六十一回国会の十二月一日には論点整理を、それぞれ本調査会に報告しております。

 「主な論点及びこれに関する各党・各小委員等の意見」について申し上げます。
 二十一世紀にふさわしい公正で活力ある社会を実現するためには、国民主権の実効性を高め、基本的人権の保障を進展させ、地方分権と地方の自立を推進していくことが求められます。そのためには、参議院が法の支配の実現、チェック、多様な意見の反映等の機能を発揮することが極めて重要であると考えられます。

 本小委員会においては、このような認識を踏まえ、「二院制及び参議院の在り方」について多岐な方面にわたって活発な議論が交わされましたので、内容に従って論点ごとに整理しております。

一、一院制・二院制の長所・短所、是非

 小委員会においては、最初に二院制ありきということではなく、国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、熱心な議論を行いました。一院制を支持する意見は、効率的な意思決定や円滑な政権交代、また両院の役割・機能分担や調整の困難さ等の点を挙げますが、他方、二院制を支持する意見の多くは慎重審議や多様な民意の反映等の点を理由としております。一院制及び二院制それぞれの長所・短所は、言わば表裏の関係にあります。両者の長所・短所についても様々な意見が出されましたが、その結果、一億人以上の人口を有する我が国では多様な民意を反映させるためにも二院制は不可欠である等の意見が出され、会派を超えて二院制を堅持することで一致しました。

 ただ、迅速な政策判断が求められる現代にあっては、効率的な意思決定と円滑な政権交代を可能にすることは、二院制を採用する場合でも忘れてはならないとの指摘もなされました。

 なお、参議院の改革が今後も必要であることは各会派とも認識が一致しております。この点に関し、両院の権能、選出方法、役割が似ていることが二院制の意義が薄れがちと言われる背景であり、それをそのまま維持すべきではなく、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が出されました。

 改革の方向としては、抑制均衡・良識・再考の府としての役割をはっきりさせるべき、などの意見が出されました。

二、参議院の機能―特に独自性を発揮すべき分野。

 参議院が補完・抑制、多様な民意の反映といった本来の役割・機能を果たすためには、衆参両院の構成・権能等の相違を明確にすべきことが多くの小委員から指摘されました。そのためには、参議院が独自性を発揮すべき機能は何か、衆議院とどのような役割・機能分担を行うかが大きな課題であること、また、役割や機能の分担を考えるに当たって、参議院は六年間と任期も長く、しかも解散がなく安定していることなどの参議院の特質を生かすことが重要であることは、一致した意見でありました。

 具体的には、第一に、参議院は長期的、基本的な政策課題を重点的に行うという点で意見が一致し、年金や教育、条約等の外交案件について取り組むべき、調査会の立法を強化すべき等の意見が出されました。

 第二に、参議院は、チェックの院として決算審査を重点的に行うべき点で意見が一致し、決算審査の実効性を高めるために審査結果に拘束力を持たせること、会計検査院を国会ないし参議院の附属機関とすること等、様々な提案がなされました。

 第三に、行政監視、政策評価についても、チェックに重点を置く監視の院として更に充実させるべきことで一致し、個別の対象としてはODAや政省令等への言及がありました。

 第四に、国会同意人事案件については、米国上院のように、ヒアリングも含め参議院が中心になって行ってはどうか等の意見がありました。

 第五に、司法府との関係については、行政全体が事後チェック型になろうとする中でチェックの院としてどう考えるかは極めて重要等の意見が出されました。

 第六に、国と地方の調整については、参議院の地域代表性を重視する考えから、参議院が国と地方の関係を扱うことにしたらどうか等の意見が出されました。

 第七に、憲法解釈機能・違憲審査的機能について、現在の最高裁判所・内閣法制局の在り方に対する問題意識を背景に、参議院に憲法解釈機能・違憲審査機能を持たせるという提案がありました。

 なお、衆議院と重複する権限・機能については、参議院として逆に弱めるところや行わないところをより明確化させることも必要であって、例えば、予算案や衆議院で全会一致であった法案など特定の議案について、参議院は審査の省略ないし簡略化を行うなどの意見が出される一方、参議院の果たすべき抑制・補完の機能という観点から反対する意見も出され、見解が分かれました。

 このほか、参議院の役割・機能との関連で会期制についても議論がなされました。また、憲法事項に限らず、運営の改善に関する事項についても多数の指摘がなされました。

三、両院間の調整―意思不一致の場合等の調整の在り方。

 議会が二つの院から構成される場合、両院間に意思不一致が生じたときにどのように調整するかは、二院制を採用する場合の極めて重要な問題であります。小委員会でも、国会の最も根本的ないし基本的なところ、すなわち、法律案・予算案の議決及び条約の承認はあくまで両院の議決をもって国会の意思決定とすることを前提に、第一に法律案の再議決要件、第二に内閣総理大臣の指名、第三に両院協議会などについて、現行憲法の調整規定の妥当性等について議論がなされました。

四、参議院と政党との関係。

 衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、また、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していたのではないかなどの問題提起がなされ、第一に政党との関係、第二に党議拘束、第三に政権から距離を置く必要性について、活発な議論が交わされました。

五、参議院の構成の在り方・選挙制度。

 多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であるという認識で一致しました。具体的には、第一に直接公選制の維持、第二に選出の在り方、第三に選挙方法、第四に一票の較差問題などについて意見が出されました。
 特に、直接公選制の維持は、両院の一翼を担う一院という立場から譲れない点であることは一致した意見であり、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところでした。また、衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面より個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めましたが、具体的な選挙制度については意見は分かれました。一票の較差問題については、参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題であるなどの意見が出されました。

まとめ。

本小委員会としては、次の諸点について共通認識が得られました。
 一、二院制を堅持する。(四十二条関係)
 二、両院の違いを明確にするため、参議院の改革は今後とも必要であり、また、選挙制度の設計が極めて重要である。
 三、参議院議員の直接選挙制は維持すべきである。(四十三条関係)
 四、参議院は自らの特性を生かして衆議院とは異なる役割を果たすべきである。「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、長期的・基本的な政策課題への取組、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など。(九十条関係)
 五、現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当である。したがって、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきである。(五十九条、六十条、六十一条、六十七条関係)
また、今後積極的に検討すべき問題として次の諸点が残りました。
 一、参議院と政党との関係。(党議拘束の緩和、参議院から閣僚を出すことを含む)
 二、参議院の構成・選挙制度。(四十七条関係)
 三、会期制。(五十二条、五十三条関係)
 四、予算、特定の条約・法案等の参議院における審議の簡略化。(五十九条、六十条、六十一条関係)
 五、「独自性を発揮すべき具体的分野等」に記した事項のうち、会計検査院の位置付け、同意人事案件、司法府との関係、国と地方の調整、憲法解釈機能・違憲審査的機能など。(九十条、八十一条関係)
これらの課題について、今後も引き続き真摯な検討がなされることを望むものであります。
以上、御報告申し上げます。

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