1. トップ >
  2. 参議院のあらまし >
  3. 参議院改革の歩み >
  4. 参議院改革関係年表 >
  5. 電子式投票装置による投票方式の採用及びそれに用いるコンピューターの多目的利用について中間報告

参議院のあらまし

電子式投票装置による投票方式の採用及びそれに用いるコンピューターの多目的利用について中間報告

参議院改革協議会報告書(中間報告)

 本協議会は、参議院の組織及び運営の改革についてかねてより検討を進めてきたところであるが、一昨年の本院議員通常選挙後の九月に、改革の具体案を作成するため改めて小委員会を設置した。同小委員会は、特に本院における議事及び事務処理の合理化及び能率化について検討を行い、昨年七月三十一日、その観点からの改革の一環として、電子式投票装置による投票方式の採用及びそれに用いるコンピューターの多目的利用についての報告書を本協議会に提出した。

 本協議会は、昨年十一月十四日、井上小委員長から報告を聴き、本年二月五日に協議を行った結果、コンピューターの導入については了とするものの、これにいわゆるインプットする事務処理の合理化に係る各項目並びに電子式投票方法等コンピューターの多目的利用について更に具体的な検討を進める必要があるので、これらについての何らかの機関を設ける等の方途を講ずべきであると認めた。

 以上、本協議会の活動について、小委員会報告書を付して報告する。

 昭和六十年二月五日

参議院改革協議会座長 遠藤要

参議院議長 木村睦男 殿


参議院改革協議会小委員会報告書

 本小委員会は、昨年九月に設置されて以来、参議院改革の具体的方策について鋭意検討を進め、特に本院における議事及び事務処理の合理化及び能率化のため種々の観点から改革の方策を探求してきたが、その一環として電子式投票装置による投票方式の採用及びそれに用いるコンピューターの多目的利用について次のような結論を得たので報告する。

昭和五十九年七月三十一日

小委員長 井上吉夫

参議院改革協議会座長 遠藤要 殿


 本小委員会は、昨年七月、通常選挙後の議院運営委員会において参議院改革協議会の存置が確認されたのをうけ、参議院改革の具体案を作成するため、同年九月に改めて設置された。

 自来十四回にわたり、特に本院における議事及び事務処理の合理化及び能率化について熱心かつ慎重な検討を行ってきたところであるが、このたび、右の観点からの改革の一環として、電子式投票装置による投票方式の採用及びそれに用いるコンピューターの多目的利用について、小委員会としての調査を終了したので、次のとおり報告する。

一、調査の経過

 電子式投票装置による投票方法については、アメリカ、フランス、イタリア、デンマーク等十七ケ国の議会が採用している実態がある。本小委員会においては、それら諸国の装置使用状況等の実情、採用するに至った経緯等を調査するとともに、電子式投票装置による投票のあり方、同装置の長所及び短所等についても調査、検討を行った。

  1.  電子式投票装置による投票のあり方
     電子式投票装置による投票はどのような場合に使用されるのが適当か、その使用方法、それらの場合の問題点特に棄権の扱いを中心として検討を行った結果、同装置による投票は本会議における投票について行うことができるものとし、棄権については特に退席することなくその旨を表示することができるものとするとともに、これを投票数に算入しないものとする等現在の記名投票とほぼ同様の効果を持つものとすることが望ましいとの意見で一致した。
  2.  電子式投票装置の長所及び考慮すべき点
     同装置の長所とされるものは
    (1)  投票の正確性の保障及び所要時間の短縮化
    (2)  表示盤には賛否が表示されるので、起立採決と同様にその把握がただちに可能となること
    (3)  定足数の確認及び各種の要求、異議申し立てに必要な所定議員数の確認を行うのに利用できること
    などであり、更に間接的な効果として
    (1)  議案に対する議員の賛否が明示されることとなることから、国民に対する政治責任がより明確になること
    (2)  いわゆる棄権ボタンを採用することによって、棄権の表明が在席のまま可能となること
    (3)  同装置の設置により我が国の電子技術のレベルを示すことになること
    などが挙げられた。
     これに対し考慮すべき点としては、かなりの費用を必要とすることが挙げられたのである。
  3.  費用
     そこで、本小委員会は同装置導入のための経費概算について調査したところ
    (A)  高機能型(汎用機)コンピューターを使用した場合(院内設置の場合)
     設置に要する費用概算      八七、六〇〇万円
     年間経常費概算          四、九〇〇万円
    (B)  高機能型(汎用機)コンピューターを使用した場合(電話局設置の場合)
     設置に要する費用概算      八五、九〇〇万円
     年間経常費概算          六、七〇〇万円
    (C)  単機能型コンピューターを使用した場合
     設置に要する費用概算      七九、六〇〇万円
     年間経常費概算          二、八〇〇万円
    となった。
     (A)と(B)の差は、設置に要する費用においては主として議場等改造費の差であり、年間経常費においては主として局舎費の差である。
     また、(A)と(C)の差は、設置に要する費用においては主としてソフトウエアの設計制作費の差であり、年間経常費においては主としてコンピューターを中心とする制御集計装置の使用料の差である。
  4. コンピューターの多目的利用
     単機能型コンピューターの機能は、電子式投票用にのみ限定され、他に利用することは不可能である。これに反し、高機能型(汎用機)コンピューターの機能は広範であり、投票機不使用の間は他の事務処理に利用できる長所がある。
     小委員会においては、専門家から意見を聴取するなど慎重に検討した結果、高機能型(汎用機)コンピューターは、将来における事務の合理化に役立つのみならず、国民サービス及び議員サービスの向上も望めることから、年間経常費以上の効用が考えられるとして、高機能型(汎用機)コンピューターを使用することが望ましいとの意見で一致した。
     なお、同コンピューターを事務処理に使用する場合、議員の履歴及び渡航関係の記録及び検索、職員の人事関係の記録及び検索等の事務においては、同コンピューターに余分の設備及び経費は、入力に要する経費を除き、不要である。また、将来のコンピューター処理事務として、議案の審議経過、事例、先例等資料の記録及び検索が考えられるが、その場合には設備等の追加が必要となることを申し添える。
  5.  コンピューターの設置
     また、コンピューターの設置場所については、経費の問題としてよりも、投票装置の制御装置としての位置づけから本来投票装置の近くにあるべきであるとの専門家の意見もあり、設置する部屋の確保の問題を除けば装置の保守、信頼性については差がないことも指摘され、経費についても年間経常費がより少額となることもあり、小委員会としては院内設置が望ましいとの意見で一致した。
     その場合、設置に要する期間については契約後約一年四ケ月(試験調整期間三ケ月を含む)を要することが明らかになった。

二、結論

 以上の検討を踏まえ、本小委員会としては、本院において本会議における電子式投票装置による投票を採用することが望ましく、その場合には下記の装置及び方式によるべきであるとの意見が大勢を占めた。
 なお、採用に当たっては、従来の表決方法、特に記名投票の要求(本院規則第百三十八条)については改正を加えないとの合意があったことを申し添える。
 また、採用に当たっての同装置に伴う設備として次のことを付言する。
1  同装置の設置に際し、同時通訳装置を設置するものとする。
2  同装置の制御集計のためのコンピューターは、高機能型(汎用機)とし、情報検索、事務処理に漸次利用することにより、国民サービス、議員サービスの向上及び事務処理の迅速化を図ることを期待するものとする。
3  右のコンピューターは、場所を見出すことができるならば、院内に設置することが望ましい。

電子式投票装置及び同装置による投票方式

 本装置による投票は、現在の三種の採決方法(異議の有無、起立採決、記名投票)のうち、記名投票とほぼ同様の効果を持つものとする。なお、将来、採決における無記名投票制度が採用された場合には、それを本装置によって行うことも可能である。

 また、本装置に付した出席ボタンにより、出席者及びその数の確認及び記録を行うものとする。

一、 電子式投票装置の機能及びその使用方法

(1)  投票機を各議席に設置し、賛成、反対、棄権、出席の四個のボタンを付する。なお、それぞれに確認ランプを付する。
 議員は出席した際は、出席ボタンを押すものとする。
 議員は、本装置による投票の際は、それぞれの態度に応じたボタンを押すものとする。

(2) 表示盤を議長席後部左右両側壁面に各一面設置し、各議員の表決内容及びその集計数を表示する。
 表示盤には議席図を議席番号を付して表示し、賛成、反対、棄権、出席にそれぞれ対応した表示色を表示するとともに、賛成数、反対数、棄権数、出席議員数等が表示されるようにする。

(3) 議長席に採決操作機を、議長席及びその他必要な席に集計表示機を設置する。
 議長は、本装置による投票の際、投票の開始及び終了を宣告するとともに、採決操作機により各議席の投票機の作動の開始及び終了を操作する。なお、議場は閉鎖しない。
 議長は、投票終了後、集計表示機の数字に基づいて投票の結果を宣告する。

(4) 制御集計装置はコンピューターによるものとし、印刷記録機を付し、記録印刷を行う。
 この記録に基づき、会議録に賛成者及び反対者の氏名を記載する。
 なお、傍聴席の一部にモニターブースを設ける。

(5) 本装置の技術的細目については別途事務局において検討するものとする。

二、 本装置採用に伴う措置

  1.  本装置による投票を導入するために次の趣旨の本院規則の改正を行うことが必要である。
    (1)  議長は、必要と認めたときは、電子式投票装置による投票によって表決をとることができるものとする。
    (2)  電子式投票装置による投票を行う場合は、問題を可とする議員は賛成ボタンを、問題を否とする議員は反対ボタンを押すことによって投票するものとする。
  2.  本装置の採用に当たり、特に左記の事項について議院運営委員会において申合わせを行う必要がある。
    (1)  議員は出席した際は、出席ボタンを押すものとする。原則として、その記録に基づき、会議録に出席議員の氏名を掲載する。
    (2)  採決を本装置によって行う場合は、議院運営委員会理事会の協議に基づいて行う。
    (3)  投票時間はあらかじめ定める一定時間(議長が投票時間の開始、終了を宣告する。)とし、その時間内はボタンの押し直しを認める。
    (4)  本装置による投票を行う場合、投票に加わらない旨を明らかにしようとする議員は、棄権ボタンを押しその旨を表示することができる。
    (5)  議員は、投票機が誤作動したと認めるときは、議長が投票の終了を宣告するまでは、その旨を申し出て、表決の表示の訂正を求めることができるものとする。
    (6)  本装置に事故があるときは、木札による記名投票その他の投票方法による。

三、 その他

 本装置は必要に応じ、次の場合にも使用する。
(イ)  定足数の確認(本院規則第八十四条第三項)
(ロ)  各種の要求、異議の申立て(本院規則第百三十条、第百三十七条第二項、第百三十八条等)に際し、特に必要があるときに、所定議員数を満たしているか否かの確認
 右の場合に、議長は各議席の投票機の出席ボタンによることを宣告し、該当する議員は改めて出席ボタンを押し、議長は集計表示機の数字に基づいて結果を宣告する。