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参議院60周年記念論文入賞者



ロボットと共に夢見る未来へ

東京都 東京学芸大学附属大泉中学校 1年
本橋 侑子

 2005年に開催された愛知万博、『愛・地球博』。そこで私は、二足歩行ロボットや人と会話できるロボットなど、未来で活躍するであろう最新ロボットをたくさん見ることができました。そして、この愛知万博で、私は「今、日本ではどこまでロボットの開発が進んでいるのだろう。」と、ロボットに大変興味を持つようになりました。ロボットに興味を持った私の様子を見て、父が
 「日本の最先端技術が見られる、筑波学園都市の『産総研』に行ってみよう。」と提案してくれたので、今年のゴールデンウィークに家族で産総研へ行きました。
 産総研で目にしたもの、それは、『愛・地球博』でも見た二足歩行ロボットを初めとして同じく『愛・地球博』にも展示された「いやし系」ロボット『パロ』、合体変形ロボット『MITRANⅡ』などです。これら展示されているロボットを見て、私はロボットが人間以上の能力を持つようになってきていることがわかりました。そして、単調な動きしかできなかったロボットが、今では物をつかむ時、その物がどんな物質でできているのかを分析して、例えば、卵のような壊れやすいものであったら優しく掴むなど、臨機応変に対応する能力を持つことにとても驚きました。
 また、人間とコミュニケーションをとれるロボットも開発されています。例えば、優しくすると喜んだり、たたくと怒ったり、表情や身ぶりで様々な感情を表すことができるロボットです。しかし、人間と同じような高度な心を持ったロボットを造るのは大変なことで、まだまだ時間がかかるのではないかと思いましたが、現在、開発されているロボットの能力と技術の高さを実感することができました。ちょうど、私の学校の「知的探究」という授業で、「私たち子どもの現在・過去・未来」というテーマに基づき、個人研究が行われようとしていました。私は、すぐに未来に関連したロボットをテーマに選びました。
 そこで、本を読んだりロボットの知識を深めていく中で、ロボットは、人間にとって、危険であったり過酷であったり、単調で飽きてしまうような作業を代行するため、まず産業用ロボットから開発されたことがわかりました。さらに、今では、ロボットは産業用だけではなく、もっと広い分野にまで開発が進んでいることも知りました。どんな分野かというと、介護医療・災害救助の分野での開発が進められているのです。さらに、「知的探究」の夏休みの宿題で、『10年後の日本』という本を読みました。この本を読んで、統計から将来の日本の姿が予測できるということがわかりました。日本は、今後、人口がどんどん減り続け少子高齢化という問題を抱えているのです。私はこうした問題を解決するためにも、医療・介護分野のロボットが必要とされているのだと思いました。高齢社会になると福祉や介護の人手が足りなくなることが予測されます。そのため、ベットに寝たままでも離れた所にある物を取ってきてくれるような高齢者や身障者の日常生活をサポートする役割をするロボットや、リハビリ支援ロボットなどの開発が進められているのです。
 しかし、こういった分野へのロボットの導入には、対象相手が人間であり、さらに、体の弱い病人や老人であったりするので、いかにロボットに優しさを持たせるかが重要です。
 親しみやすい、より人間に近いロボット造りが求められているのです。そうした中で、今、家庭に少しずつですが、ロボットが入ってきています。最初に家庭に入ったロボットとして有名なのが「AIBO」です。発売当初は、技術好きの方にしか受け入れられなかった「AIBO」ですが、今では、一般の人にも受け入れられるようになりました。ロボットが幅広い層に興味を持たれてきている証拠だと思います。この「AIBO」。家庭への導入にあたり、実は様々な工夫がありました。例えば、指などを挟み込んだら、きちんと脱力するというような安全面の工夫です。
 さらに、留守番機能もついていて、物音がしたり、何か動くものがあると写真を撮るという仕事もできる上、ペットの役割も果たすのです。「AIBO」によって、ロボットの安全性や機能の素晴らしさが証明され、ロボットが私たちの身近なものとなる先駆けになったと私は思います。今では、「AIBO」以外にも家庭用ロボットで購入できるものもでてきています。そして、発売当初より値段が下がってきて、今では家庭でも買うことができるくらいになりました。もう、ロボットと一緒に暮らすことは夢物語ではないのです。
 ロボットと人間との共生が実現に近づいてきたのです。ロボットとのコミュニケーション能力、サポート能力が今よりさらなる進化をとげれば、ロボットと一緒に暮らすことで、ロボットが人間の心を潤し、安らぎを与えてくれるようになるのではないかと私は考えます。人間とロボットがお互いに支え合いながら生活していく、そんな、素晴らしい夢のある日本になってほしいと強く感じました。