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参議院60周年記念論文入賞者



私たちが夢見るこれからの日本

東京都 練馬区立光が丘第二中学校 2年
橋本 怜

 僕らの国の未来は何色だろうか。ペールトーンのベージュといったところか。すぐバラ色と思えないのはなぜか、考えたい。
 まず未来を想った時最も心を重くするのは、環境悪化の進行である。今の日本は40年前の公害汚染時期(高度経済成長時代)よりはるかに改善されつつあるというが、目を世界に向けると40年前の世界より遥かに深刻な環境破壊と汚染が爆発的勢いで進行している。地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、森林破壊、砂漠化、海洋汚染、化学物質による汚染。吸う空気も、口に入れる食物も、泳ぐ海も、遊ぶ森も、浴びる日差しも何もかも有毒である未来。刻一刻と地球が汚れていく様に胸が締め付けられ、いてもたってもいられない気持ちになる。
 次に未来の鏡を曇らせるのは、資源の枯渇である。僕たちは生まれたときから豊かな暮らしの中にいた。身の回りには生活を快適にする道具がだいたい全て整っていた。家の中は寒くもなく、暑すぎもしない適温に保たれている。誕生日やクリスマスに欲しいものを聞かれても、すぐに思いつかないくらい何でも持っている気がする。携帯電話もipodもパソコンも自転車もかっこいいジーンズも持っている。が僕らの未来にまず訪れるのは、世界や日本の産業を支えてきたさまざまな資源が掘り尽くされ終わってしまうということだ。石油化学製品が消え、石油エネルギーが使えない。食料ですら全地球人口を養えないということだ。豊かな時代に育ててもらった僕たちは、今後、ものが十分に無い時代に生きなければならないのだろうか。
 急速に進む日本の少子高齢化社会は、現役世代の社会保障負担増を招くのは確実だという。さらに核戦争による人類滅亡までの残り時間を示す「終末時計」が、2007年1月17日に「残り7分」から「残り5分」に2分進められた、と米科学誌は伝えた。現代に生きる僕たちの課題は尽きない。
 しかし、僕ら中学生で未来に絶望しているものは一人もいないんじゃないか。何とかなるではなく、何とかするつもりだからだ。僕らはゆとり教育の世代だと言われてるらしいが、よく考えて自分たちが生き抜いてゆく力を育みながら成長してきた世代であるとも信じたい。
 地球の長い時の流れの中で、この先50年は後世から見ればターンの時期に当たっていたと見ることができるのではないか。つまり地球から「奪い尽くし」「使い捨てた」時代から、「優しく保護し」「維持し」「育てる」時代へのターン。新しい時代の幕開けに、僕は胸が躍り闘志が湧く。いよいよ本当の意味でここからこそが日本の出番なのではないか。世界で唯一の被爆国、敗戦も復興も経済成長も公害もバブル崩壊もすべて経験した我が祖国日本。日本にとって、人類にとって、地球にとって何が大切か分かりかけてきているこの国こそが地球再生に大きな貢献ができると信じる。
 日本は世界に発信する。「地球再生のプログラム」を。その政治力と科学力・技術力を結集して再生プログラムを誠実に力強く。もはや日本の産業の向かっていく先に環境を痛めつけるモノ生産があり得ないのは日本人の誰もが知っている。日本の作り出すものは優しく、他国の人々を助けて、地球を甦らせる。精緻で妥協のない技術力で生み出され、あらゆる分野でメイド・イン・ジャパンは役に立つ。エコロジーとかユニバーサルデザインを遥かに越えた未来を考えて造られた製品。そのような共通理念を日本人は誇りを持って共有する。日本の行う投資やサービス、援助は目先の利益にとらわれない、未来社会を見据えた流れで行われる。
 そしてその全ての舵取りをするのが政治の役割である。日本の思いを全世界に発信する要である。世界では国際紛争が多発し国連がその対応に追われているが、日本も様々な形で国際貢献が求められている。そういう現在こそ日本の立場を明確に発信出来るのは、政治の力である。僕らは地球のために出来ることを必死で考え、そして行動する。さらにおおぜいの日本の人々がそれに加わる。世論となり、地方自治体が動き国会へ。衆議院と参議院で法として成立する。その過程で丁寧に世界に提案するプログラムを検討する。強者が得をしたり、弱者ばかりが犠牲になることがない提案を作り上げ、まず日本で実施する。京都議定書の実行は様々な各国の意見の壁に阻まれてるとはいえ、このような会議の決定が日本でなされたことにどれだけ僕らに誇りと希望を与えたことか。国際社会において名誉ある地位を占めるには、金と武力ではないことを実践出来る国が僕らこの日本である。
 これが理想論では終われない未来がもうすぐそこに近づいている。