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参議院60周年記念論文入賞者



環境先進国へ

北海道 北海道教育大学附属札幌中学校 2年
中西 真梨恵

 新聞記事を読んで日本の未来を想像してみました。その記事は、現在のデータから予想した50年後の日本の姿を数字で表したものです。国立社会保障・人口問題研究所の発表によると50年後2055年の日本の総人口は8993万人、65歳以上が人口に占める高齢化率は現在の倍の40.5%、合計特殊出生率は1.26。50年後、このまま少子高齢化が進めば、世代間で支え合う事で成り立っている現在の社会保障制度の維持は難しく、国民への大幅な負担増、給付削減、労働力人口減少による経済の停滞が懸念されるという厳しい未来です。
 人口が増加する事を前提に計画されていた社会プランは今、軌道修正をせまられ、正に日本は未来を模索している状態だと毎日のニュースから伝わってきます。
 一方、人口減少を阻止すべく少子化対策、労働人口確保に取り組む日本とは反対に世界人口は増え続け、現在の65億人が50年後には90億人に達するという予測があります。それが現実となれば資源は不足し、地球環境は悪化の一途をたどる事になると予測されています。
 地球規模で考えた時、日本の人口減少は果たして本当に問題なのだろうか。もちろん近い将来に備えて、現在の経済を維持する為には、減少傾向を改善するあらゆる手段を考え、実行する必要がありますが、百年単位の未来を描いた時、経済成長優先という考え方を転換するという道を選ぶ事も必要な時期を迎えているのではないでしょうか。
 人間は、常に進化し続けるという長所を持っていると私は思います。生活を便利に快適に、と工夫、改良をくり返してきました。そして、今の豊かな生活があります。でもその豊かさに決して満足することなく、進歩、発展の努力を今も続けています。しかしその素晴らしい長所こそが環境のバランスを崩しているという皮肉な現実があります。
 日本の現状を考えた時、短期的には支え合う社会の維持の為税収を確保する必要があると思います。その為には今以上に就業率を向上させる事が不可欠だと考えます。中でも女性が働きやすい環境を整える事は、仕事と家庭生活の調和によって少子化を改善する事にもつながっていく重要な課題だと思います。子育て等の理由で離職した女性の再就職を支援する、乳幼児手当の支給額増額、育児休業補填率を拡充する等の対策だけでなく、厳しい未来への漠然とした不安を解消する手だてが必要だと思うのです。
 しかし長期的には、私達日本人も地球に住む人類の一員としての視点を持ち、人口減を想定した様々な見直しをはかり無駄を省き、人にも地球にも優しい社会を実現する事で、世界のモデルケースとなりうるのではないでしょうか。
 人口の減少は、経済成長を優先し、常に成長する事で膨大な借金財政を支え続ける国という現状から少ない労働力、資源を効率よく使う工夫を生かす国となるチャンスと捉える事はできないでしょうか。
 未来の予測は、あくまでも予測にすぎませんが、経済は成長し、生活はより快適になるのが当たり前と思い、その為に努力を続けてきた私達に前代未聞の課題が投げかけられている事は紛れもない事実です。
 私達が目先の便利さや快適さに捕われずに不便さを工夫で乗り切る勇気を持つ時なのではないでしょうか。環境を第一に考える事が人類存続につながる事を理解し、国全体の目標と出来たなら未来への不安を希望の糸口にする事がきっと出来ると思います。
 日本は戦後、人も資源も充分にない中で創意と工夫を重ねて技術立国として発展してきました。その先人の知恵を省エネルギーや環境対策等の分野での優れた技術に生かし、新しい道を探る道にこそ50年後の厳しい予測を翻す可能性があると思います。経済大国から地球環境の変化を冷静に捉え、適切に判断出来る小さくてもバランスのとれた社会を実現する国となる事こそが、世界にも大きな貢献をもたらす事となると考えます。これは、人類が国を超えて心を一つに取り組む事の出来る唯一の課題であり、現在も各地で続いている争いを止めるきっかけになりうる課題です。何しろ生命を維持できる地球環境の存続がかかっているのですから、自国や民族の利益を争っている場合ではないのです。
 私は、日本に環境先進国として世界を平和へと導く役割を担う存在であって欲しいと願っています。