質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五四号

精神科病院の新型コロナウイルス集団感染の防止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月二十一日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   精神科病院の新型コロナウイルス集団感染の防止に関する質問主意書

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は各地で報告されているが、精神科病院では感染者が数百人に上る桁違いのクラスターが続出している。

 精神科病院でのコロナ感染率は一般の人の三・五倍、死亡率は五・三倍に上るとの調査もある。

 精神科病院での感染対策には精神科ならではの難しさがある。精神疾患を有する患者は、手指消毒やマスク装着が困難であったり、自身の症状や異常を的確に伝えることが困難であったりするケースが多い。特に精神科病院では閉鎖病棟も存在し、閉鎖病棟内で感染者が出ると、ウイルスの蔓延を防ぎづらい環境にある。

 また、国は精神科病院の医師数を一般病院の三分の一、看護職は四分の三で良いとする「精神科特例」と呼ばれる基準を設けているため、精神科は病床あたりの医師数が少なく、感染症への備えが弱いとされる。

 このような特性を有する精神科患者への感染拡大を防止するため、以下のとおり質問する。

一 新型コロナウイルス感染症患者が重症化した場合は、原則、感染症専門医療機関で対応すべきであることは、精神科患者においても変わらない。しかし、通常のケースと比較し、精神科患者の感染については、転院が困難な状況があると指摘がなされる。

1 日本精神科病院協会が二〇二一年九月に公表した調査結果によると、転院できずに死亡した患者が二百三十五人にも及ぶとのことである。政府はこの実態について、どのように評価するか。

2 精神疾患を有する患者においても、新型コロナウイルス感染症に罹患し、医師がその重症化により転院が必要と判断した際には、転院が遅滞なく行われるよう、体制を構築すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 精神科患者のワクチン接種に関して厚生労働省は、「障害者支援施設等入所者等及び従事者への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種について」(令和三年二月十九日付け厚生労働省健康局健康課ほか連名事務連絡)や、「障害者支援施設等入所者等及び従事者への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種について(改正)」(令和三年四月五日付け事務連絡)などにおいて、優先接種する方針を示している。しかし、実際にはワクチンはなかなか届かず、精神科病院でのワクチン接種は、一般より大幅に遅れたケースが多いとされている。

1 前記二の事務連絡にもかかわらず、なぜこのような遅延が生じたか。

2 今後予想される感染拡大に当たって、同じような遅延が生じるおそれはないか。

三 私は、精神科の患者の三度目のワクチン接種(ブースター接種)に関して、早い段階での優先接種を求め、令和三年九月二十二日に厚生労働大臣宛申入れを行った。この申入れに対して、厚生労働省からは、前記二の事務連絡を根拠に「精神障害を含む障害をお持ちの方は、一・二回目接種において優先的に接種を受けているため、「一・二回目接種を完了してから原則八か月後」の日も早く来ることになり、追加接種の順番は先の方になります」との回答があった。

1 前述のように、事務連絡とは裏腹に実態として精神科への接種が遅れたとすると、三度目のワクチン接種も同様に遅れることになるのではないか。

2 前述の特殊性に鑑み、精神科患者については、接種の前倒し(接種間隔の短縮)を検討すべきではないか。

  右質問する。