質問主意書

第186回国会(常会)

質問主意書


質問第一四五号

巨大防潮堤建設における意思決定過程に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年六月十八日

和田 政宗   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   巨大防潮堤建設における意思決定過程に関する質問主意書

 東日本大震災の復興事業として、被災地の各地で防潮堤の建設が開始されている。被災海岸四百二十八箇所における防潮堤の事業費は、約七千七百億円とされている。
 これらの防潮堤の整備は、東日本大震災からの復旧・復興の名の下に進められているが、新たに整備される防潮堤は、被災前の防潮堤に比べて大型化し、「巨大防潮堤」とも呼ばれている。この中には、費用対効果が算出されておらず整備効果が不透明なものや、まちの景観を破壊し、水産業や観光産業などの障壁になると地域住民から反対されているものもある。
 例えば、気仙沼市本吉町小泉地区の中島海岸(以下「中島海岸」という。)における防潮堤については、建設費が約二百三十億円であるのに対し、防潮堤が守る国道や農地等の価値は約三十七億円と、守るべきものの価値と巨大防潮堤の建設費用のバランスが全く取れずに見合わないものとなっているとの報道もある。また、防潮堤を造らなければ、まちづくりが進まないなどと強引に合意形成が行われて、住民の懸念が残ったまま巨大防潮堤の建設が行われようともしている。
 こうした巨大防潮堤建設における意思決定過程が不透明であることを問題視し、国会で度々質問してきたが、これまでの政府の答弁について改めて確認したい。
 そこで、以下質問する。

一 平成二十六年六月三日の参議院国土交通委員会で、費用対効果が全く見合わない防潮堤の整備に対しても予算配分を行うのか財務省に確認したところ、愛知治郎財務副大臣は、「被災地における防潮堤の建設については、現地において比較的発生頻度の高い津波を想定しつつ、地元の市町村によるまちづくりの議論などを踏まえ、海岸管理者である県などが適切に定めるものであると承知をしております。ただし、その海岸管理者においては、まちづくりの将来を見据え、真に必要な投資としていただくとともに、将来のメンテナンス費用についても十分検討していただく必要があると考えております。したがって、主に国土交通省など関係省庁からも必要な助言や支援を行っていくことが重要であると考えております。なお、個別箇所の費用対効果や予算執行状況については、事業を所管している国土交通省に御確認をいただければと思います。」と答弁している。

1 防潮堤の費用対効果については、通常、事業箇所の採択の決定に当たって、国土交通省及び農林水産省は、「海岸事業の費用便益分析指針(改訂版)(平成十六年六月)」等に基づき費用便益分析を実施していると承知している。今般、被災地の海岸堤防事業の採択に当たり、どのような費用対効果の算定を行ったのか。事業箇所ごとに具体的に明らかにされたい。
2 中島海岸における防潮堤の費用対効果については、どのように算定されているのか。前提条件、便益及び費用の具体的な数値などその詳細を明らかにされたい。
3 愛知財務副大臣は、防潮堤の建設において、「将来のメンテナンス費用についても十分検討していただく必要がある」としているが、実際には、防潮堤建設後の将来にわたる維持管理費については、海岸管理者によってどのような試算が行われているのか。算定されていないとすれば、維持管理費のリスクを抱えたままで、防潮堤の建設を推進していくことについて、改めて政府の見解を明らかにされたい。
4 防潮堤建設の追加費用について、土井亨国土交通政務官は、「海岸管理者であります県が検討をした結果、当初想定されなかった理由に基づき、やむを得ないと認める場合には必要な予算措置をすることになると考えております。」と答弁している。例えば、中島海岸における防潮堤地盤の沈下等現在指摘されている事項は含まれないと考えるが、「やむを得ないと認める場合」についての具体的基準について明らかにされたい。

二 平成二十六年四月二十一日の参議院決算委員会で、中島海岸における防潮堤の整備は、防潮堤が設置される津谷川河口部よりも上流の津谷地区の人家を津波から守るためともされており、津谷地区の住民の合意が必要であり、その状況について質問したところ、土井国土交通政務官は、「事業の必要性を理解していただくため県は住民説明を行い、大きな異論はなかったと聞いております。」と答弁している。

1 津谷地区においては、具体的にどのように合意がなされているのか。県が行った住民説明には、何名の参加者があり、そのうち賛成者は何名であったのかなどその詳細を明らかにされたい。
2 土井国土交通政務官は、津谷地区の県の住民説明では、「大きな異論はなかった」と答弁しているが、異論はないとしている根拠を明らかにされたい。また、県の住民説明においては、住民に対して具体的にどのような説明がなされ、それに対し、県は住民に対してどのように発言の機会を与え、住民からはどのような意見があったのかなど詳細を明らかにされたい。
3 過去の政府答弁では、政府は、地元振興会が防潮堤建設に関する地域住民の意見を代表する組織であると認識しているとみられるが、津谷地区の振興会における意見集約は、いつ、どのようになされたのか具体的に明らかにされたい。
4 小泉地区に関しては、土井国土交通政務官の答弁では、中島海岸の防潮堤建設に関する地元からの要望について、「堤防の整備を行う小泉地区の七地区全ての地元振興会から早期の事業推進についての要望がなされております。」としているが、小泉地区の七地区全ての地元振興会での意見集約は、いつ、どのようになされたのか具体的に明らかにされたい。

  右質問する。