質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三六号

内閣参質一八一第三六号
  平成二十四年十一月二十日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 岡田 克也   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員佐藤正久君提出シリア国内の戦闘状況及び国際社会のシリア安定化への取組に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員佐藤正久君提出シリア国内の戦闘状況及び国際社会のシリア安定化への取組に関する質問に対する答弁書

一について

 シリア・アラブ共和国(以下「シリア」という。)においては、二十か月にわたり弾圧と暴力が続き、連日各地において多数の死傷者が発生するなど、シリアの情勢は予断を許さない状況にあると考えている。政府としては、シリア在住の在留邦人の安全確保のため、在ヨルダン日本国大使館内にある在シリア日本国大使館臨時事務所を通じて、当該在留邦人と緊密かつ継続的に連絡を取り、その安全確認を行うとともに、シリアの治安状況についての情報提供を行ってきている。また、当該在留邦人に対して、国外への退避を繰り返し勧告しているところである。

二について

 御指摘の「停戦」の意味するところが必ずしも明らかでないが、「犠牲祭」期間中の暴力の停止は、ブラヒミ国際連合・アラブ連盟共同特別代表により提案されたものと承知しており、我が国としては、同特別代表の取組を支持したところである。しかしながら、同期間中も含め、シリアでは連日死傷者を伴う衝突が発生しており、暴力の停止が実現したとは考えていない。

三について

 シリア国内においては、現在、昭和四十九年五月に設立された国際連合兵力引き離し監視隊(以下「UNDOF」という。)が展開し、シリア南西部のゴラン高原地域におけるイスラエル国及びシリア間の停戦監視並びに両国軍の兵力引き離し等に関する合意の履行状況の監視を任務として活動している。我が国は、平成八年二月から、広報、輸送及び重機材整備の業務に関する企画及び調整等の業務を行う司令部要員及びUNDOFの活動に必要な日常生活物資等の輸送及び道路等の補修等の業務を行う自衛隊の部隊(以下「UNDOF派遣部隊」という。)を派遣している。
 また、昭和二十三年五月に設立された国際連合休戦監視機構(以下「UNTSO」という。)は、イスラエル国とシリアを含む数次にわたる中東紛争に関する紛争当事者間の停戦監視等を任務としており、ゴラン高原地域におけるイスラエル国とシリアの間の停戦監視について、軍事監視要員をUNDOFに派遣し、当該軍事監視要員がUNDOF司令官の下で活動していると承知している。
 我が国としては、UNDOF及びUNTSOは、イスラエル国及びシリア間の和平交渉における中心的な問題であるゴラン高原地域に展開し、同交渉を支える大きな役割を果たしてきていると考えている。

四について

 現時点において、昭和四十九年五月にイスラエル国とシリアとの間で締結された兵力引き離し協定(以下「協定」という。)が破棄されたとみなし得るような事実は、協定に規定する兵力引き離し地帯(以下「兵力引き離し地帯」という。)内、イスラエル国国内及びシリア国内のいずれにおいても、国際連合によっても確認されていない。
 したがって、UNDOFの活動地域において、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)第三条第一号に規定する武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意としてイスラエル国及びシリア間の合意があり、かつ、同号に規定する国際連合の統括の下に行われる活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者であるイスラエル国及びシリアの当該活動が行われることについての同意並びに同法第六条第一項第一号に規定する紛争当事者及び当該活動が行われる地域の属する国であるイスラエル国及びシリアの我が国の国際平和協力業務の実施についての同意は得られている。また、当該活動は、イスラエル国及びシリアのいずれの紛争当事者にも偏ることなく実施されている。
 なお、同条第十三項第一号に掲げる場合には、同法第八条第一項の規定により定めた実施要領に従って当該業務を中断することとなり、さらに、派遣の終了が必要であると認めるとき、又は適当であると認めるときは、同法第六条第十三項に規定する実施計画の変更を閣議により決定し、我が国の要員の派遣を終了することとなる。我が国の要員の武器の使用については、同法第二十四条等に定めるところによる。
 以上を踏まえ、政府としては、我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則は満たされていると考えている。

五について

 お尋ねの「反政府勢力」が何を指すのか必ずしも明らかでなく、お尋ねの「全ての反政府勢力」について評価を行うのは困難であるが、例えば、「シリア国民評議会」については、国家又は「国家に準ずる組織」のいずれにも該当するとは認識していない。また、お尋ねの「ゲリラ組織」については、確立した定義があるとは承知しておらず、お尋ねにお答えすることは困難である。

六について

 お尋ねの「シリア国民評議会」については、本年四月一日(現地時間)にイスタンブールにおいて開催され、我が国も参加した第二回シリア・フレンズ会合の議長総括において、反体制諸派の統合に向けて「シリア国民評議会」が果たしてきた役割に鑑み、「全てのシリア人の正当な代表の一つ」であり、また、「国際社会との代表的な対話相手」と位置付けられたところである。

七について

 本年五月、政府の招聘により訪日したガリユーン「シリア国民評議会」議長(当時)による玄葉光一郎外務大臣表敬が行われた。他の主要国の外相と個別に会談を重ね、密接な関係を有する同議長との間で意見交換を行うことは、我が国の対シリア外交の効果的な推進に資するとともに、我が国の対シリア外交に対する「シリア国民評議会」の理解を増進させることにもつながり、そのことによる弊害はないと考えている。

八について

 お尋ねの「新たなPKO部隊の派遣」については、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。我が国は、これまでの国際平和協力業務の実施を通じて着実に実績と経験を積み上げており、施設整備、医療、輸送等の我が国が得意とする分野を中心とした活動における高い能力と貢献に対して、国際的に高い評価を得ているものと認識している。
 国際連合平和維持活動への協力は、我が国が国際社会の平和と安定に貢献するための最も有効な手段の一つであり、我が国が適切に対応することが可能であるか等の観点を踏まえながら、引き続き、積極的に取り組んでいく考えである。

九について

 兵力引き離し地帯内の情勢については、本年七月以降、一部地域において散発的に銃撃音等が確認されている。同年十一月に、兵力引き離し地帯内で少なくとも四両のシリア軍の戦車が活動している旨の国際連合の発表、イスラエル軍車両にシリア側から発射されたと見られる銃弾が命中した旨の報道、及びイスラエル軍からシリア側に対し警告射撃等を実施した旨のイスラエル軍の発表がなされたことについては承知しており、当該情勢を注視して活動すべき状況であると認識している。
 現在、UNDOF派遣部隊は、シリア国内においては、兵力引き離し地帯内及び協定に規定する兵力制限地帯内で、UNDOFの活動に必要な日常生活物資等の輸送及び道路等の補修等の業務を行っている。